「消毒薬の歴史について」 東京顕微鏡歯科診療専門歯科衛生士YU

  • 2020.09.13 Sunday
  • 15:15

「手指衛生」「環境の消毒」「器具の消毒」に消毒薬は欠かせません。

 

 

1774年カール・ヴィルヘルム・シェーレ先生によって塩素が発見されました。塩素をクロール石灰として消毒に使用したのが消毒薬の始まりです。1820年〜1850年代に感染創の消毒や、手指、器具の消毒に使用されていました。

 

クロール石灰(次亜塩素酸カルシウム)とは「さらし粉」のことです。

さらし粉とは漂白粉、カルキともいいます。 次亜塩素酸カルシウムを有効成分とする白色粉末でアルコールや水によく溶けます。 塩素に似た刺激臭を放ち、強い酸化漂白作用をもちます。 一般に漂白剤、殺菌剤として用いられます。

 

1860年代には「石炭酸」が消毒に使用されるようになりました。石炭酸は「フェノール」のことです。

1870年代には手指消毒に「昇汞水(ショウコウスイ)」が使用されるようになりました。昇汞は塩化第二水銀で強い毒性があります。現在では工業用の染色剤に使用され毒物指定されており、手指消毒にも使用されていません。

 

1851年にWatt C先生が次亜塩素酸ナトリウムを合成しました。

1878年にSterberg GM先生が塩化化合物の消毒効果を発見しました。米国公衆衛生協会は1886年に次亜塩素酸ナトリウムを殺菌剤として認定しています。

1890年代になると合成技術の進歩によって新しい消毒薬が合成されます。

1908年にはEin- horn & Gottler先生らによって第四級アンモニウム塩の合成。Harries先生がグルタラールアルデヒドを合成しました。

1918年にはYoung HH先生がメルブロン(マーキュロクロム)の殺菌作用を見出しました。これは有機水銀ニナトリウム塩化合物で日本では「赤チン」として使用されていました。しかし製造工程で水銀が発生するため国内では製造が中止されています。

 

1953年にGoldschmidt 社が両性界面活性剤を開発しました。

1954年にはDavies GE先生がクロルヘキシジンを開発しました。

1956年にはShelanski HA先生がポピドンヨードを開発しました。

1963年にはStonehill先生がグルタラールアルデヒドの殺菌効果を見出しました。

1977年にはGrosse-Boewing W先生が過酢酸の開発をしました。

1994年にはGordon MD 先生がフタラールを開発しました。

 

手指衛生と消毒薬

1876年にロベルト・コッホ先生が細菌を発見するまでは、感染の原因が微生物だということは誰も知りませんでした。

1841年にセンメルヴェイス・イグナーツ先生はクロール石灰で手指の消毒を行えば、感染は防止できることを経験的に見出しました。当時は産褥熱による死亡率が高く、医師がお産を介助する第一産科病棟と助産師がお産を介助する第二産科病棟では産褥熱による死亡数が倍以上違いました。第一産科病棟の医師たちは死亡した患者の解剖を終えてそのまま手を洗わず出産を控えた妊婦の検査をしていました。このことより、センメルヴェイス・イグナーツ先生はおそらく、死体についている何か悪いものが医師たちの手で運ばれていると考えました。産科の処置前にクロール石灰による手洗いを推奨しました。すると死亡率が12.3% から3.4%に低下したといわれています。しかし当時の医学会には受け入れられませんでした。

1860年代になると石炭酸が手洗い、創部の処置に使用されるようになりました。手術時に石炭酸を浸した包帯で密封することによって、敗血症が激減したそうです。石炭酸と同じ時期に昇汞が使用されましたが頻回に使用することで皮膚に障害が発生しました。

1900年代には新しいの登場により術前手洗いにスクラブ法が取り入れられました。外来や病棟ではベースンによる手洗いが一般的となりましたが、ベースン法は消毒薬の調整後に多くのスタッフが使用するため衛生的な面から使用されなくなりました。そして消毒薬と流水による手洗いと変化していきました。その後アルコールベースの手指消毒薬が登場しました。

 

 

環境消毒と消毒薬

1871年にジョゼフ・リスター先生が創部の感染には空中に存在する微生物が原因であると仮定し、石炭酸噴霧装置を考案し環境消毒を行いました。しかしこの効果は顕著ではありませんでした。現在も消毒薬の噴霧は否定されています。

国内では1980〜1990年代に環境消毒にグルタラールを使用していました。当時の成書にも、清潔区域は週末にグルタラールによる清掃消毒が有効、モップの消毒にもグルタラールが有効であると記載されています。しかしグルタラールは粘膜刺激作用があるため、2003年のCDCのガイドラインに環境に使用しないことが記載されています。さらに、一般病棟の消毒も不要とし、血液や体液で汚染された場合は塩素系消毒薬の使用を推奨しています。

粘着マットや消毒薬含有マットは床に付着した微生物が感染に関与するエビデンスがないことから否定されています。現在は頻回に接触する環境は接触感染を防止するために、消毒薬の使用が推奨されています。

 

 

器具消毒と消毒薬

センメルヴェイス・イグナーツ先生はクロール石灰で器具の消毒も行いました。ジョゼフ・リスター先生は石炭酸で器具を消毒し感染防止に努めました。消毒薬の他に検討されたのが加熱消毒です。1891年に「シュンメルブッシュ煮沸消毒器」が考案されました。その後世界中で使用されます。国内でも1950年代にはガラス製注射筒や注射針の再使用が繰り返し行われていました。その後、高圧蒸気滅菌器たEOGの登場によって滅菌法が確立されていきます。そして、消毒と滅菌が分けて考えられるようになり、最近ではスポルディングの分類が推奨されています。

 

ご参考までにどうぞ。

 

 

 

 

「日本医療機器学会 実技講習会」

  • 2020.09.06 Sunday
  • 12:06

先週、日本医療機器学会の実技講習に行ってまいりました。

検温、手指消毒、マスク・フェースシールド着用、換気がしっかりされてる環境で少人数に振り分けられ講習が行われました。

 

 

受講生の皆さんは企業の方、病院勤務の方で、開業医勤務は私だけというアウェーな講習会に終始ドキドキでした。

今までは機械を想像するしかできなかったのですが、実際に大型の滅菌器、WD、テストパックなど見ることができとても勉強になりました。

 

詳細は後日アップしていきたいと思います ^^

 

 

炎症性腸疾患 潰瘍性大腸炎とクローン病 

  • 2020.08.30 Sunday
  • 15:54

身体にウイルスや細菌が入ったとき体内から異物を追い出そうと反応するのが「免疫システム」です。

免疫システムが作動するときには 、腫れや痛み、発熱などの炎症が引き起こされます。腸内において、免疫が正常に機能せず炎症が過剰に起こり、腸を傷つけてしまう病気を「炎症性腸疾患 」といいます。 炎症性腸疾患には、主に「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」という二つの病気があります。これらは慢性の病気であり、難病に指定されています。

 

 

(三井記念病院より引用)

 

 

「潰瘍性大腸炎」では大腸のみに病変が現れ直腸から徐々に広がり粘膜の表層が腫れ上がるのが特徴です。

「クローン病」は小腸・大腸・肛門を中心とした消化管全体が対象であり、一箇所にとどまらずとびとびに病変が発生し、腸の壁の深い部分へと炎症が進行 していきます。その結果、腸に穴があいてしまったり、隣の腸にまで炎症が広がり腸と腸がトンネルを作ってしまったりすることがあります。また深い腸の傷が治っていく過程で、腸の形が狭く変形してものが通らなくなることもあります。このような腸の変形が起こってしまうことがクローン病の一番の特徴です。

 

潰瘍性大腸炎の症状は下痢と血便が特徴的です。

クローン病では下痢、腹痛の症状が多いですが、発熱や体重減少など、腸とは直接関係しないと思われる症状が主であることもありま す 。

潰瘍性大腸炎の患者さんが最も困ることは、急な腹痛と排便の我慢がきかず、コントロールできなくなることです。それにより、日常生活に支障をきたし外出することすら困難になる場合もあります。

クローン病では、おなかの症状の他に、肛門部に膿がたまる痔瘻を併発することが多く、肛門部の不快な症状に悩まされることがあります。

 

潰瘍性大腸炎、クローン病は慢性疾患なので、薬物療法により炎症を抑え、症状を軽減、コントロールし日常生活を続けられる状態である寛解を保つことが目標となります。約9割の患者さんが寛解を保っているとのことです。

 

潰瘍性大腸炎では、腸の腫れを抑えるために腸の粘膜に付着して作用する「メサラジン」という薬がメインで使われます。炎症が強い場合はステロイドや免疫抑制薬を使用してコントロールします。

クローン病では、炎症の原因となるTNFαという体内物質の働きを抑える抗TNFα抗体製剤という注射薬が適応となります。

 

潰瘍性大腸炎では、薬物療法で症状が改善せず排便のコントロールができなくなると大腸全摘の手術を行う必要があります。

クローン病では、変形してしまった腸を手術により切除します。

 

潰瘍性大腸炎、クローン病に起こりうる合併症として皮膚に湿疹が出たり、関節に痛みが出たりすることがあります。

 

ご参考までにどうぞ。

 

新型コロナウイルス感染症と医療機器の取り扱いについて

  • 2020.08.23 Sunday
  • 21:26

新型コロナウイルス感染症流行の現在、多くの診療で医療機器が使用されています。 医療機器の取扱説明書では、一般的な再処理や日常点検の方法については詳しく触れられていますが、通常使用時の感染予防策については十分に記載されていないのが現状です。

そのため、今回の新型コロナウイルス感染症に対しては、通常の再処理日常点検に加えて使用時の適切な感染予防対策を明らかにする必要があると考えられます。

 

 

医療機器を使用する診療においては以下の点に注意して、患者さんと医療従事者の感染予防を徹底するように推奨されています。

 

1) 診断用・治療用医療機器のいずれの使用においても、取扱説明書に記載された再処理 (洗浄、滅菌)、日常点検に加えて、患者さんごとに適切な感染予防策を実施する。

 

2) 患者さんと接触する可能性のある医療機器については、標準予防策、接触予防策に準じ、 患者ごとに医療機器表面とその周辺環境、患者接触面のアルコール清拭を実施する。 (診断用放射線機器、超音波診断装置、患者用ベッド、体温計、血圧計など)

 

3) 患者さんと接触する可能性のある医療材料については、患者専用の使用とし、施設の状況 に応じて、関係省庁や日本医師会から提供される情報を参考に単回使用医療機器への 切り替えを考慮する。(喉頭鏡、手術用ハンドピース、ドリルバーなど)

 

4) 診療中にエアロゾル発生の可能性がある医療機器を特定し、機種ごとに適切な感染予防対策を講じる。(人工呼吸器、内視鏡装置、電気メス、気腹装置など)

 

5) 診療中にエアロゾル発生の可能性がある医療機器の使用にあたっては、患者さんと医療従事者の安全確保のため、室内の十分な換気を行い、標準予防策、飛沫予防策に加えてエアロゾル対策を考慮する。

 

6) 新型コロナウイルス感染症疑いの患者に対しては患者の既往歴や症状など臨床的背景に応じて、施設ごとに医療機器を用いた診療時の感染予防策を確立する。

 

今年は日本医療機器学会大会がweb視聴で開催されます。

 

 

放射線治療と歯科疾患

  • 2020.08.16 Sunday
  • 12:39

放射線治療はがん細胞を死滅させる効果と同時に、他の正常な細胞にも影響して副作用が起こります。放射線治療の副作用は放射線が当たった周囲で起こるため口、鼻、喉を治療する場合にその周囲に放射線が当たり、口腔粘膜炎や口腔乾燥などの症状が起こります。口腔粘膜炎による痛みは、口から食事や水分を取ることを困難にさせ、体重減少など体力を落とす原因につながります。口腔乾燥は味覚の異常の原因にもなり食べる楽しみを奪うことになります。食事が取れなくなると栄養低下によってその他の全身トラブルや副作用悪化の原因となります。そのため計画通りのがん治療が行えなくなる可能性があります。口腔内のトラブルを最小限に回避するため、歯科支持療法が必要となります。どんなに口腔ケアをしても副作用をゼロにすることはできませんが口腔ケアにより副作用の症状が軽減することがわかっています。

 

 

一般的に放射線療法に入る数週間前にかかりつけ歯科医院を受診しクリーニングを受けることが推奨されています。しかし、これは歯科医療従事者の立場から言わせると、放射線治療の有無に関係なく日頃から定期的に歯科医院を受診し、クリーニングを受けていれば問題のない話です。人はいつ倒れて入院するかわかりません。日頃から口腔内を清潔にしておくことが、闘病中のトラブルを軽減することに繋がります。

 

放射線治療により耳下腺に放射線が当たると唾液量が大きく減少します。口腔乾燥、口腔粘膜炎、味覚異常、食事の困難などが生じてきます。放射線治療終了後、唾液の分泌障害は半年から一年で徐々に回復すると言われていますが、完全に元に戻らないこともあります。味覚異常は半年ほどで回復することが多いです。

 

 

唾液の分泌減少の合併症として、カンジダ性口内炎、放射線性う蝕があります。

唾液量の減少で口腔内の自浄作用や免疫作用が低下し、カンジダが増殖し感染が拡大します。また唾液量の減少で口腔内を弱アルカリ性に保てなくなったり、自浄作用の低下が原因でう蝕が発生しやすくなります。

 

放射線治療中はとにかく口腔内を清潔に保つことが大切です。口腔内の保湿、痛みが強く何も口から食べれない時は食事の前に痛み止めも検討します。ご参考までにどうぞ。

 

 

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