「慢性疼痛と診断機器」東京顕微鏡歯科診療専門歯科衛生士YU

  • 2020.07.05 Sunday
  • 08:21

慢性疼痛@厚労省ガイドライン とは3カ月間を超えて持続もしくは再発、または急性組織損傷の回復後1カ月を超えて持続する、または治癒に至らない病変に随伴する疼痛です。原因として慢性疾患(例,癌,関節炎,糖尿病)、損傷(例,椎間板ヘルニア,靱帯断裂)、多くの原発性疼痛疾患(例,神経障害性疼痛,線維筋痛症,慢性頭痛)などがあります。基本的に薬剤と心理学的治療が用いられます。

 

 

米国では痛みの治療や介護のためにかかる医療費が年間8兆円に上るといわれています。国際疼痛学会(IASP)では、痛みは呼吸、体温、血圧、心拍数に続く第5のバイタルサインとして位置づけられています。臨床診療において痛みを評価することを重要としています。

日本においても、高齢社会を反映して帯状疱疹後神経痛や、脊椎術後疼痛症候群など難治性慢性疼痛患者が著しく増加しています。病状は似ていても、痛みの性質や程度は患者さんによって多彩です。

 

痛みは主観的な感覚であり、定量化が困難であり、精神的な感情的な影響を受けやすいため、周囲から理解されにくく患者さんは苦しむことが多くあります。国内で慢性疼痛を有している患者さんは2000万人といわれています。痛みは病気の兆候の中で最も多く、昔から医学・医療の原点でもあります。患者さんの80%は痛みを主訴に病院や診療所を受診しています。また、基本となる病気が治癒しても痛みだけが残ることも稀ではありません。

 

慢性疼痛における診断機器として、サーモグラフィ計測器日本サーモロジー学会機能的脳画像診断機器知覚・痛覚定量分析器があります。治療機器としてエピドラスコピー光線療法治療機器Raczカテーテル硬膜外神経根形成術機器電気刺激療法などがあります。

 

患者さんの疼痛程度を測定して誰もが痛みの程度を共有できるために「疼痛度の測定機器」が必要とされます。機器を応用して多方面から痛みを診断・治療することが大切です。

 

fMRI (functional magnetic resonance imaging) はMRIを利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つです。

 

脳局所の神経活動が高まると、近傍の脳血流が増加します。神経活動による酸素消費増加分を上回って血流が増加する結果、局所の酸素飽和度が増加します。酸素飽和度が増加すると還元ヘモグロビンが減少するため磁場の均一さが増します。そのため、磁場の均一さに依存するT2強調MRIを撮像すると神経活動が増加した部位のMRI信号が観察されます。この現象を[blood oxygenation level-dependent]BOLD効果とよびます。BOLD信号増加は神経活動増加が始まってから5〜6秒遅れてピークに達します。

通常、fMRI撮像には、全脳のT2強調画像を2〜3秒ごとに連続撮影します。被験者に痛みを与えるとそれに伴い複数の脳部位でBOLD信号の増加が確認されます。

 

 

末梢神経から脊髄を経由して脳に到達した侵害受容情報は脳の中で処理されて始めて「痛み」として認知されます。痛みの認知に関連して賦活する脳部位をペインマトリックスとよびます。

 

(痛みの機能的脳画像診断より引用)

 

 

1「外側侵害受容系」  外側視床核、第一次第二次感覚野、後島皮質

2「内側侵害受容系」  内側視床核、前島皮質、前帯状皮質、前頭前皮質

 

外側侵害受容系は痛みの場所、強さ、性質などを形成すると考えられています。(ボトムアップ成分)

内側侵害受容系は痛みに対する情動、受容態度、痛み修飾などの機能を担うと考えられています。痛みに対して脳が反応し、脳内及び脳から脊髄への下行路で痛み処理を修飾する経路であり、トップダウン成分といえます。

脳における痛みに対する反応は、ボトムアップとトップダウン成分の交差作用と考えることができます。ボトムアップはトップダウンを促進し、アップダウンはボトムダウンを抑制しようとする方向に働きます。

 

慢性疼痛患者では、内側侵害受容系である前帯状皮質と背外側前頭前皮質が機能しないという特徴が現れます。これらの部位はペインマトリックスのトップダウン成分と考えられ、下行性疼痛修飾系の起始部と考えられます。

健常者ではこれらの部位が陽性賦活呈し、痛みを感じると同時に痛みを抑制しようするシグナルを発生します。慢性疼痛患者では、これらの部位が逆に陰性賦活を呈します。よって下行性疼痛装飾系の機能不全が慢性疼痛の病態に深く関係すると考えられます。

 

ご参考までにどうぞ。

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